【感想】みらいめがね

 

みらいめがね それでは息がつまるので

みらいめがね それでは息がつまるので

 

 

評論家でラジオパーソナリティでもある荻上チキさんのエッセイ集。

荻上さんのことは討論番組で初めて見たときから早口で頭が回って話が上手で論理的で感情的にならないといったサイボーグ的な印象しかなかった。

ラジオでも日々違う話題を捌いていくし、かなり高度なオールラウンダーといった感じで、評論家を名乗りながらも「彼女たちの売春」ように綿密に取材をしたジャーナルスティックな本も出版する一面もある。

最近はラジオを聴いてもいじめ問題とかかなり社会問題に傾斜してる感がありながらも相変わらず引き出しは多い。

このエッセイでは荻上さん自身が歩んできた人生の出来事、自分自身について書かれている。

荻上さんは謙虚というか自分を卑下して書いているんじゃないかと思うくらいラジオやテレビで見る彼のイメージと違ったのでまず驚いた。

自己肯定感が低く、うつを患い投薬しながら日々を過ごしていることは何を言われても論理的に反論できる「強い人」のイメージとは真逆だった。

学生時代に虐められていたのはなんとなくイメージできるが、バンド活動に熱中していて、大学で文学を専攻したのは好きな先輩が文学のゼミにいたから自分も入ったというのはちょっと面白かった。

荻上さん自身の弱さが正直に書かれていて一見強そうな人でも弱い一面があり、荻上さん自身で解決したのではなく周りのサポートがあり今の荻上さんを作っているのがよくわかった。

母親なり子供なりラジオのスッタフなりアウシュビッツのガイドなりタクシードライバーなり荻上さんに影響を与えている人が数多くいて、生きているのだと理解した。