【感想】 韓国 行き過ぎた資本主義

 

 

「パラサイト 半地下の家族」が外国映画で初めてアカデミー賞作品賞を獲った。

映画はまだ見てないが、著者によると「半地下」とは貧困家庭を示す象徴的な言葉らしい。

韓国経済のイメージとしてサムスンや現代などの一部の財閥系の大企業が経済を牽引しており、財閥企業がコケれば国がコケるほどGDPに占める割合が大きく、国としても財閥を後押しするよな政策を打ち出している印象が強かった。その財閥企業に入るために幼少期から苛烈な競争を強いられる様が書いてあるのが本書だ。

親が子供の教育にかける熱はすごく塾の掛け持ちは当然で、選ばれた学生しか入れない塾に入るための塾もあるらしい。子供達は学校と塾の教科書が入った重いリュックを背負い塾をハシゴする。塾といってもペーパー試験対策の塾だけではなく、内申と面接が重視される難関校もあるため水泳などのスポーツレッスン、音楽や美術教室など広範だ。

勉強漬けでメンタルを病んでくる子供も出てくるため、生徒を対象にしたメンタルクリニックも流行している。

そうした中で塾のスター講師が生まれ「一打講師」と呼ばれる。一打講師の影響力は凄まじく、TV番組を持ち、本を出版すればベストセラーになる。年収は100億ウォンを超える。

しかしこうした一打講師は全体の1%もおらず大多数は月に200万ウォン収入で暮らしており、退職金もないあたりに韓国経済の構造が見える。

驚いたのは受験とは学生だけでなく国としての一大イベントで、白バイが受験生を試験場まで運んだり、英語のリスニングの時間では韓国全土の飛行機の離着陸が禁止される。

なぜこれだけ教育熱がすごいのかといえば学力こそが難関絵のパスポートであり、学歴こそが大企業や高収入の仕事へのパスポートだからだ。政府高官が権力を使って子息を難関校に入れたという報道が度々話題となる。

当然受験戦争に敗れる人間も大量に出る。そうした人たちも本書では登場するが、日本の大多数の学生のよりも優秀な感じがした。

勝ち組と負け組との賃金格差は大きく、それは韓国の少子高齢化にも大きく影響している。

韓国の流行語に「N放世代」という言葉があり、恋愛、結婚、出産を諦める「三放世代」という造語からさらに進化して人生の全てを諦めるという「N」という頭文字が付いたものだ。

これは若者世代を指す言葉だが、中年世代の状況も厳しい。出世コースを外れれば肩たたきをされるし、40を過ぎてリストラをされれば転職はほぼ不可能だ。若者からは既得権益者と攻撃され、家庭にも居場所がない。

高齢者になっても社会保障が充実してないのでなけなしの金のために働かざるを得ない。

幼少期から高齢者になってからも切迫感は途切れず、日本の未来が見えるような気がした。