【感想】 記者、ラストベルトに住む

 

 アメリカ大統領選の民主党候補がバイデンに決まり、二期目を目指すトランプとの対決が決定した。トランプの新型コロナ対策の成果で票の流れも変わるだろうが、トランプ優勢だ。

アメリカンファーストを掲げ、メキシコとの国境に壁を作ると言ったり、イスラエルの米大使館をエルサレムに移転したりと世界中が反感を買うような政策を実行する人物がなぜ大統領になれたのか。誰がトランプを支持しているのか。新聞記者の著者が産業が消えた街ラストベルトに住み、そこでの暮らしからトランプを大統領にさせた背景を探っていく。

著者が実際に住んでいたオハイオやペンシルヴェニアの一角には人々の仕事が無く、最低賃金のサービス業に従事し、貧困に陥り、同級生はドラッグに溺れ多くが亡くなったという女性のインタビューから始まる。ひと昔前は炭鉱があり、自動車などの工場がひしめき、そこで働くことがそこに住む人々の誇りだった。現在ではそれらの工場は賃金の安い中国やメキシコに移転してしまった。

本書に登場する多くの人物が現在の仕事に不満を感じながらも誇りをもって仕事をしたいのがよく伝わってきた。皆仕事についてよく語る。仕事が生きがいなのだ。だからこそアメリカに産業を取り戻すと主張するトランプを支持する。それらの人々はトランプに倫理など求めない。産業を復活させ雇用を取り戻すことや株価を上げることで自らの生活を再建してくれることを期待しているのだ。